「光触媒」、最近耳にすることがあるようになってきた言葉。光触媒って何だろう?
光触媒とは一言で言うと「光が照射されることにより、それ自身は変化をしないが化学反応を促進する物質」ということになります。よく知られている例としては、植物の光合成がそれにあたりますが、植物の光合成は葉緑素(クロロフィル)が、光触媒の正体であります。
光触媒には、有機金属錯体(色素)と半導体があります。半導体光触媒は光が照射されることにより、化学反応を制御するはたらきがあります。一般機能として、脱臭・殺菌・抗菌・防汚・有害物質の除去などがあります。この機能を生活に役立てようとするのが、光触媒の研究開発なのです。

光触媒は、近年では二酸化チタンが有名ですが、それ以外にもあります。歴史的起源は定かではありませんが、酸化亜鉛の光触媒反応は1930年前後から、記述された文献が存在しています。二酸化チタンが脚光を浴びるようになった経緯としては、1968年に、東京大学の大学院生であった、藤嶋昭氏が電子写真の画像材料としての、基礎研究の一環として、光に応答する酸化物半導体の研究をしていたことに端を発します。当時、すでに酸化亜鉛や硫化カドミウムを電極として、水溶液中で光照射すると、光の強さに比例して電流が流れることが解かっており、ドイツやアメリカでも盛んに研究が行われていました。その頃、藤嶋氏は偶然にも酸化チタンの単結晶を手に入れました。その酸化チタンの単結晶をダイヤモンドカッターでスライスし、電極に使ってみました。対電極に白金電極を使い、閉鎖回路をつくり酸化チタンにキセノン燈の光を照射してみました。驚いたことに、酸化チタンと白金の両電極からガスがブクブクと出てきました。早速、これらの気体を採取し、ガスクロマトグラフで調べました。酸化チタンからは酸素、白金からは水素が発生していました。結果的に、水が光照射によって酸素と水素に分解されていることが解かりました。しかも、この水の分解によって酸化チタン自身は溶解せず、何日間も光照射を続けても、その表面特性は変化が見られなかったのです。この発見は、植物の光合成によく似ていました。
「本多・藤嶋効果」と名付けられ、世界に発表されたことで、世界中の科学者の知る所となり、以来今日まで酸化チタンを上回る半導体光触媒は報告されていません。
従って、半導体光触媒の発見者は藤嶋昭氏(現:東京大学大学院工学系研究科教授・工学博士)であり、我国発信のもので、日本は光触媒先進国といえます。


光触媒二酸化チタンの、もう一方の主役、光についてお話をしたいと思います。
二酸化チタンが光触媒としてはたらくには、紫外線が必要です。紫外線とは、太陽光や室内の蛍光灯に含まれている光で、特別なエネルギーを必要とせず、一般的な生活空間に元々存在しているクリーンなエネルギーです。
藤嶋教授が二酸化チタンの光触媒実験を行ったのは、ルチル型という結晶構造の二酸化チタンでしたが、現在は光触媒としての働きがより効率の良いアナターゼ型が主流になっています。二酸化チタンはn型半導体に属し、電子によって電気を通すタイプの半導体です。二酸化チタンに、あるエネルギー以上の紫外線があたると、二酸化チタンを構成している価電帯電子が励起して、上のレベルの伝導帯の電子になります。この状態が、半導体の光励起状態です。価電子帯と伝導帯のエネルギーの差を、バンドギャップエネルギーといいます。アナターゼ型の、二酸化チタンのバンドギャップは3.2eVです。

光のエネルギー(eV)=プランクの定数×光の速度÷波長(nm)=1240÷波長(nm)

上の式で光の波長に換算すると、387.5nmという数値が求められます。 アナターゼ型の二酸化チタンを光励起させるには、約388nmの波長の紫外線が必要ということです。電子が伝導帯に光励起されると、価電子帯には電子の抜けた穴ができます。この穴を正孔(ホール)といい、抜けた電子と正孔が光触媒反応を起こすことになります。